Jeu Pédantique (Par Copieur)Rintarô Iwashita
Ⅰ
À Une Certaine Étape de la Vie人生のある段階において [4′33″]
Génération Perdue失われた者と呼ばれた者たち [4′33″]
Schwarzer Regenmantel黒い雨合羽 [4′33″]
Katze Gesuchtたずね猫 [4′33″]
Sacrifice et Surplus犠牲と余剰 [4′33″]
Überdosierung bei Placebo偽薬の過量投与 [4′33″]
Isolierung Überzug絶縁被覆 [4′33″]
Ⅱ
Ein Lustiger Samstag愉しい土曜日 [4′33″]
Un Dimanche Joyeux愉しい日曜日 [4′33″]
Nicht Längerもはやない [4′33″]
Piqûre D'insecte Invisible見えぬ蟲の咬傷 [4′33″]
Wasserfall Läuft Hoch遡上する滝 [4′33″]
Dépression et Guerre抑鬱と戦争 [4′33″]
Des Chaussettes靴下 [4′33″]
Ⅲ
Ja. Es ist Eine Eintönig Wiederholung, Die ihr Hasst.そうだ.君たちが忌み嫌う単調な繰り返しだ. [4′33″]
Nur Weil es Draußen Keine Feinde Gibt敵が外にないからといって [4′33″]
Sommeil Gaspillé et Dette 惰眠と負債 [4′33″]
Schritte zum Tyrannen暴君への歩み [4′33″]
Filii Sanctus高徳な子供たち [4′33″]
Fehlübersetzung von Fehlübersetzung誤訳の誤訳 [4′33″]
Délire Poétique詩的錯乱 [4′33″]
Ⅳ
Patterns and Elements文様と要素 [4′33″]
Lex Contradictoriarum矛盾律 [4′33″]
Tastenanschlägen nach der Schlierenmethodeシュリーレン法による打鍵 [4′33″]
Homéostasie et Peau恒常性と皮膚 [4′33″]
Verwirrungen, Vergessen, Vorrücken撹乱.忘却,前進 [4′33″]
Cher Ennui親愛なる倦怠 [4′33″]
Wüste砂漠 [4′33″]
Ⅴ
Quelques Accumulation何かしらの蓄積 [4′33″]
Eine Erste Bewegung第一の運動 [4′33″]
Utzuroうつろ [4′33″]
(複写機による)衒学的な遊び
目覚めると枕元で旋回している
《ある旋律》は
夢の岸辺の手土産ではない。
それは
僻地への旅であり
常緑樹の枯葉であり
遠いむかしに黙殺された祈りである。
《保証人のいない音楽》
その魔縁と向き合ううちに
わたしはいつのまにか友人たちと逸れ
あらゆる教義的なものから不適合とされ
ひとりになっていた。
いつも無意味にそれら身寄りなき魂を預かり
しばらくのあいだ途方に暮れ
ようやくみなりをどう整えうるか思い至るようになる。
いずれにせよ《憂いなき人生》と《白い肌》は
手に届くように見えてついには求むべくもないもの。
べつに号泣するほど美しくなるわけではないが
この子らもこの子らなりの生を果たすことができるだろうと
ささやかな諦めがつけば
つかのま安堵することができる。
そしていまやわたしは碌に働きもせず
この子らと遊んでいるだけだ。
*
わたしの与り知らないところでは着々と
力学
生理
心理
社会
神
といった概念が捉え損ねつづけている
ある未知の法理のもとに
《こと》が運ばれている。
わたしはそれらと同じ運行表に紛れて
明るいほうへ
明るいほうへ
向かいたがっている羽蟲の群れのように
繰り返し
繰り返し
透明な障壁に頭を打ち付けながら
一瞥の写像において音楽であった魔術の痕跡を訪ねてまわっている。